もくひょう

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もくひょう

現在アマチュアで、絵本出版の経験がまったく無い私には、明確な絵本作家に対する、ものさしのようなものが、まだありません。

けれども公募展に投稿するようになり、審査員の先生方のことばを身近に聞く機会があったり、まわりの人からのアドバイスを受けたり、絵本についての書籍を読むようになったり等から、絵本作家という職業の大切な根っこが少し見えてきました。

もちろん人や立場によって、絵本作家という職業のとらえ方はさまざまでしょう。

このページは、私自身に、迷いがあった時に今の気持ちに戻れるように記録し、みなさんに読んでいただくことで、この道を外れないように、努力していこうと思っています。

まだまだ修行の身の上です。
青臭い思いをご了承ください。

こどもの心をうらぎらない

娘たちが生まれた時、先輩ママからプレゼントされた、クマ と ウサギ のぬいぐるみがあります。

「最後には、ボロボロになるよ」と先輩ママがニコニコしながら手渡してくれた時には、「そういうもんなんだぁ〜」と漠然と受け取りました。

そのぬいぐるみは、あの夢みるようなふわふわの長い毛を持たず、飾りもまったくなく、タオル地で、目が小さく引込んでいて、表情もとぼしい、本当に控えめで素朴なぬいぐるみ達でした。

まずは、手でにぎり、ぎゅっとつぶす、なめる、しゃぶる。
母は、くさくなったぬいぐるみたちの手洗いを何度も何度も繰り返しました。

歯が生えてくると、噛んで引っ張る、振り回す、投げる。特に引込んだ小さい目が魅力的なようで、かみちぎろうと長時間努力する娘達。

目玉の小さなビーズが飛び出て、押さえの糸が出てしまい、慌てて修繕したこともありましたが、糸が切れてビーズがなくなるようなこともなく、本当に丈夫な作りだと、洗濯するたびに関心をしました。

やがて、娘達にやさしい心が芽生えて、ぬいぐるみと穏やかな時間を持つことができるようになると、悲しいとき、さびしいとき、うれしいとき、あそぶとき、ぬいぐるみはその時に一番ふさわしい表情で、応えるようになり、娘達の一番のお友達となったのです。

そして8歳になる今も、ずっといっしょの、旧友として我が家で暮らしています。

このぬいぐるみこそ、
子供の成長を、ともにあゆみ、心に寄り添うためにと、制作の方が真剣に向き合ってつくられた、宝物でした。

売れるための飾りや媚びをせず、子供のためにと、真剣に考え制作すること。

安くてかわいらしくて、目を引いても、すぐに壊れて、子供の心を裏切ってしまうものが、どんなに多くあることでしょう。
そしてそのことが、その子に悪い影響を与えてしまっていることを、制作側がもっと、イメージしておかなければいけないのだと、感じました。

お値段が安いのだから仕方がないとか、壊れやすいので扱いに気をつけて遊べとか、売れればOK、その後は知らないとか、そんな言い訳をして子供のものを制作することがないように、肝に銘じて作品に向かうこと

それが、アマチュアではなく、職業として絵本作家になるという道。

現在の私はそう思っています。

 

身近な本から

こどもの心に寄り添った、良い絵本とは、いったいどんな絵本なのか?

とてもわかりやすく子供と絵本のかかわりを綴った「えほんのせかい こどものせかい」 松岡 享子 (単行本 - 1987/9) は、絵本を制作する人、親となって絵本を探している人、どちらにもお勧めの本です。

絵本の指南書として有名な松居直「絵本のよろこび」。
ロングセラー
と呼ばれる絵本を、編集の立場からとても熱く語っていて、大好きな本です。



●絵本作家から

第25回ニッサン童話と絵本のグランプリで大賞をとられた宮越暁子さん。賞を受けてから出版になるまでのご苦労をご自身のブログにちょっと掲載していました。
「日本の教室は普通窓が左にあって光も左からはいってくる」。
上記の指摘で、素敵な教室の場面を丸々書き直しをしています。プロの仕事の大変さを知ることができます。

●審査員の指摘から

「窓から」  2009年制作 
 第25回
 ニッサン童話と絵本のグランプリ
 優秀賞作品

■アマチュア箇所1
午後に虹が見えている窓から、真っ赤にそまった夕焼け空を見ることはできないという事実。いったいこの窓の方位はいかに?

■アマチュア箇所2
夜暗くなって(多分深夜)、戻ってきたと思われる猫を、満月がこの窓の低い角度から、微笑むことができないという事実。

上記の箇所は、私の作品について、審査員のプロの目で、ご指摘をいただいたものです。

アマチュアだったら、虹も見せたい、夕焼けも見せたい、最後はやっぱり満月がいいと、そのまま通してしまうことでしょう。

でも、もしもこの絵本がこのまま出版され、ファンになってくれた男の子が、成長して天文学の学者になって、それから父親にもなって、さて、息子にこの大好きな本を選んで読み聞かせをする時に、どうなるでしょう。
きっとがっかりするでしょう。
それは、やはり、大人になったけれども、そのもと子供の心を裏切ったことになるのです。

絵本は子供だけではなく、実はその子が親になった時にも、裏切らないような注意が必要なんですね。

現在社会の追従をしてはならない

「子供が目にする絵本や童話の世界では、大人が読む小説とは違い、現実の今の悪い風潮を追従するような表現を、してはならない。」授賞式でいつも穏やかなスピーチをされている松岡享子先生が、第27回では、怒りを込めて力強く訴えました。

それは、内容を教育的にしなければならないというのではありません。
子供が本来持っている生命力に満ちた生きる力を応援できる児童文学・絵本の存在を切実に現場から求めている声でした。

 

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